蘇りの家シリーズ:翡翠の家
蘇りの家シリーズ:翡翠の家@糸魚川
定年後、一人暮らしのお母様の元へご夫婦で戻るためのリフォームです。
最新の増築部が昭和4年。200年近い歴史ある建物。最初に都内でお話
を伺った時に、この建物を活かしたいという思いが伝わってきました。
建設会社の方々とお邪魔したときには、何よりお母様が「何処の誰
さんね」なんてご実家を知っていたり、地域の活動で知り合いだったりと
すっかり打ち解けてしまったことが、今回の工事の成功に繋がったと思い
ます。本来の家づくりだなぁと感じたのです。
建物は確かに古いモノでしたが柱が欅だったり、大きな梁や細かい細工の
建具など捨てがたい宝の山でした。これを活かしきらなければ、そんな思
いでした。「あるモノをそのまま活かしきる」それがコンセプト。
建具も材料も再生再利用。減築と復元、復活と延命。虫に食われたり破損
箇所もありましたが、職方達は工夫と技術でカバーしてくれました。建具
に貼られた九九表や柱の「0戦隼人」のシール。家族の歴史だけでなく、
施主幼少時の思い出もそのまま残しました。堅い職業を勤めたS氏の賑や
かな幼少期も目に浮かぶようです。
新しく付け加えたり補修した箇所は、色を合わせず白木のままにしまし
た。新旧がわかるようにする事と、徐々に追いついていく変化を楽しめる
ように考えました。
床は畳レベルに合わせ、地元の建設会社が県産材の杉から作っている
低温乾燥長かんな仕上の香素杉。厚さ30mmです。ノーワックスで香り
を愉しみます。
背の高いS氏には低すぎる建具と梁ですが、住み慣れたこの建物での第二
の人生はきっと充実したモノになると思います。
これから50年、100年後、今回のリフォームの真価が問われます。